ユーダリル

 二人の反応に、店主はクスクスと笑う。そして時折チラチラと二人に視線を向けつつ、食器類を包んでいく。しかし笑いを堪えるのが大変なのか、最終的には噴出してしまっていた。

「わ、笑わないで下さい」

「いや、すまない」

「怒ります」

「割引をするから、許してほしい」

 と言うが、内心は違う。やはりおかしくて仕方がないのか、いまだにクスクスと笑っていた。その反応に、ウィルはムスっとした表情を浮かべる。流石に、これ以上からかわれるのは精神的に悪い。尚且つ恥ずかしい。客は、ウィルとユフィールの二人ではないからだ。

「お金です」

「はい。毎度あり」

「次は、お願いします」

「はいはい」

 軽い口調の店主に、これ以上の言葉は無理と判断する。ウィルは購入した品物を貰うと、店から出て行こうとするが、ユフィールがついてこない。そのことに気付いたウィルはユフィールの手首を掴むと、強制的に連れて行く。勿論、その姿に対しても店主は反応をしていた。

 口笛が、店の中に響く。

 しかしウィルは、完全に無視をした。




「ウ、ウィル様」

「気にしなくていい」

「は、はい」

 照れ隠しをしているのか、口調がいつも以上に強い。それを聞いたユフィールは異論を唱えることはしなかったが、心の中で微笑んでいた。店主があのように言いウィルは怒っていたが、ユフィールは違っていた。彼女にしてみれば、恋人同士に見られることが一番嬉しい。

 それだけウィルのことが好きで、一生一緒にいたいと思っていた。勿論、それが現実として訪れるかは不明。

 しかし、そのように願ってしまう。現に、ウィルと出掛けていると面白く、心が安らげた。

 それに、多くの者が認めている。それだけ、お似合いのカップルという言葉が似合っていた。
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