ユーダリル
流石に、これ以上の縛りは身体に悪影響を与えてしまう。ウィルはギュッと縄を縛ると、ディオンの側から離れる。そして、まじまじと凝視した。
「……縛り過ぎた」
「ウィル様」
「まあ、大丈夫だ」
「そうなのでしょうか」
「飛竜は、丈夫だよ。で、暫くこのままにしておくから。食事は、与えないで。途中で、根を上げるから」
そう言うと、再び怪しい笑顔を作る。
ユフィールは、ウィルと付き合っている。そして、相手は大好きな人物。縛っている縄を解き救い出してもいいが、後で文句を言われたら怖い。それを恐れるユフィールは、口をつむぐ。
後ろ髪を引かれる思いがする。
だからといって、行動に移せない。
ウィルは先に、建物の中へ戻っていく。
ユフィールはウィルとディオンの交互を見詰め、オロオロとするしかできない。この場合、ディオンを救い出すのが人道的考え。ユフィールは、ウィルに従う。そう、感情に正直だった。
そして、三日が過ぎ去る。
今日も、ディオンの鳴き声が響く。
ウィルの縛り方が上手いのか、動いた範囲は小さい。
飛んで別の場所へ行くのは、不可能だった。縄で両翼の付け根を、きつく縛り上げていたからだ。それにより、両翼を動かす度に縄が邪魔をする。そのことを一日目で学習したらしく、ディオンは一箇所に止まっている。それは無駄な体力を使うと、余計に腹が空くからだ。
建物の中で、ディオンを見詰めているユフィール。流石に三日目となると、心配がピークに達する。部屋の中で、いったりきたり。食事中のウィルにしてみれば、実に鬱陶しい。しかしユフィールの手料理は美味しいので食事を口に運びつつ、ディオンのことを気にしなくていいと言う。
「いつまで、やられるのですか?」
「あと、二日」
見た目、皮下脂肪が多いとは思えない。五日間日干し状態では、下手したら死んでしまう。一応、水は飲んでいる。近くに小川が存在しているので、毎日顔を突っ込んでがぶ飲みしているのだ。