ユーダリル

 普通、ジャガイモの芽には毒が存在するので取り除いて食べるものだが、ディオンの場合は違う。芽に毒が有ろうが無かろうが関係ない。ボリボリと食べ、全てを胃に納めていく。

「凄い食欲だね」

「日干しですので」

 凄まじい食べっぷりに、ウィルは唖然となってしまう。瞬く間のうちに、家にあった食料が底を付く。それを目の当たりにしたウィルは内心、日干し計画を行わなければよかったと後悔する。

 まさか、全ての食料を食べてしまうとは――

 ディオンの底なしの胃袋を完全に甘く見ていた。と同時に、食料を買う出費に悩んでしまう。

 ウィルの気持ちを知らないディオンは、満足そうな表情を浮かべるとゲップをする。そして喉が渇いたのか、川べりに行きゴクゴクと喉を鳴らす。その飲みっぷりも、半端ではない。川の水が全て干上がってしまうのではないというほど、ディオンはゴクゴクと飲んでいた。

「……反省」

「ウィル様?」

「ディオンの食欲の高さを計算しなかったのが、間違いだったよ。お陰で、痛い出費があるし」

「今日のお食事は……」

「材料が無い」

「では――」

「買いに行こう」

 その提案に軽く頷くと、ユフィールはそれ以上何も言うことはなかった。今、ウィルは相当のショックを受けている。これ以上の出費は、最悪の場合アルンに泣き付かないといけなくなってしまう。

 しかしあのアルンに泣き付くには、プライドを捨てないといけない場合もあるので、ウィルは嫌がる。それにアルンに貸しを作っておくと、倍以上の返済を求められることが多々ある。

 だが――

 今回は、泣き言を言っている余裕は無い。

 と言って、セシリアに頼るわけにもいかない。

 そもそも、この「ディオン日干し作戦」を知っているのは、ユフィールだけだった。それにウィルに味方のセシリアも、今回の件をいい方向に捉えるとは思えなかった。寧ろユフィールと同等の考えを持ち、厳しい言葉を投げ掛けてくる可能性が高いので、頼ることはできない。
< 171 / 359 >

この作品をシェア

pagetop