ユーダリル
アルンはウィルを相手にした場合、強気に出る。しかしセシリアの場合は、それはできない。流石、最強の秘書。完全に、アルンを手玉にとっている。よって、渋々語っていった。
「……という訳だ」
「兄貴も、考えていたんだ」
「う、煩い」
語っていった内容というのは、自身の将来のことについて。このまま、一人で暮らしていくわけにはいかない。それに周囲からそのことを言われ続けているので、ウィルに構っている余裕がなかったのだ。無論、これは真剣そのもので、セシリアとの未来が関わっているからだ。
「じゃあ、結婚するんだ」
「今じゃない」
「でも、いつか」
「そ、そうだな」
アルン自身、一生独身を貫こうとは思っていない。社長という身分上、伴侶がいた方がいい。それに、跡継ぎ問題も発展してしまう。それにより、アルンの結婚を周囲が急がしていく。流石に、毎日のように「結婚」の二文字を言われる。これで意識しない方が、おかしい。
「お祝いしないと」
「早い」
「そんなことはないよ。相手がいないわけじゃないし。だから、ユフィールに優しくなったんだ」
ポンっと手を叩くと、ウィルは一人で納得する。ユフィールは、セシリアの妹。そしてセシリアは、アルンが好意を抱く相手。そうなると、ユフィールを邪険に扱うわけにはいかない。
そのわかりやすい態度に、ウィルは怪しい笑みを浮かべる。普段、アルンに苛められているウィル。仕返しとばかりに、このような機会を逃さなかった。そう、脅しに掛かったのだ。
「兄貴の弱い一面、発見」
「何が、弱い一面だ」
「そうじゃない。セシリアさんに……」
「黙れ!」
流石に、これ以上は言われたくない。その為、アルンは必死に誤魔化していく。だが、ウィルにそれが通じるわけがない。それどころか、取引を持ち出される。それこそ、金を貸して欲しいというもの。普段のアルンであったら、取引に応じない。しかし今日は、違った。