ユーダリル
何と、取引に応じたのだ。
何度も溜息をつくと、机の中から小切手を取り出す。そしてペンを手に取ると、スラスラと数字を書き込む。その後一気に小切手を切ると、不機嫌な表情でそれをウィルに差し出した。
「これでいいか?」
「有難う」
「無駄に、使用するな」
「大丈夫。衣食住に使うから」
セシリアに手渡された書類を机の上に置くと、同時にウィルは小切手を受け取る。次の瞬間、其処に書かれている数字に瞳を輝かしてしまう。この金額であったら、二人と一匹でかなりの日数暮らすことができる。それに、ユフィールにも給料を支払うことが可能だった。
アルンから金を貰ったら、これ以上この場所にいる必要はない。ウィルは小切手を握り締めると、挨拶もせずに部屋から出て行ってしまう。その一瞬の出来事に、セシリアはウィルが出て行った扉と、アルンを交互に見る。そして、徐に口を開くとウィルと同じことを聞く。
「本当だ」
「そうですか」
「いけないのか」
「いえ、アルン様がそのように仰るのなら……以前は、そのようなことは口にしませんでしたので」
「言えるか」
「そうですね」
その言葉に、セシリアはクスクスと笑う。確かに、このようなことを口にすることはできない。今回、このように話してくれた。セシリアにとって、それが嬉しいことだった。これにより、二人の関係が更に深まる。しかし、感情に浸っている暇は無い。そう、仕事が待っている。
セシリアはゆっくりとした歩調で机の側に行くと、ウィルが置いた書類を一枚手に取る。そして、アルンの目の前に突き出す。それは、今月の売り上げが書かれた大切な書類であった。
「結構、いったな」
「お陰様で」
社長はいい加減だが、重役と社員達が頑張っているので会社が成り立っている。それを証明するのが、この書類。セシリアは皆の頑張りを評価して欲しいので、アルンの目の前に突き出す。だが、相手は不真面目の人物。数字ばかりに視線が行っていたので、雷が落ちる。