ユーダリル
「朝食です」
そう言いつつ、ディオンのもとへ料理を持って行くユフィール。今日の献立は、野菜中心の料理。昨日肉食中心の料理を出したということで、今日はヘルシーな献立でいくことにした。しかし、ディオンの文句は無い。それどころか、大量の涎を流し瞳を輝かせている。
「はい。どうぞ」
目の前に、料理を置く。
その瞬間、ディオンは齧り付いた。
バクバク。
モグモグ。
グチャグチャ。
ディオンの食べ方は、上品という言葉が当て嵌まらない。周囲に、食べカスが飛ぶ。だが、本人は気にしていない。ただ、目の前の食べ物を胃袋の中へ入れていく。そして全ての食べ物を食べ終わった瞬間、大きいゲップをした。だが、これでディオンの食事が終了したのではない。
何と、周囲に飛んだ食べカスを舌で器用に拾っていったのだ。無論、それもバクバクと食べる。
ユフィールにとってそれは、見慣れた光景。その為、動揺はしていない。無論、最初は驚いた。しかし、人間は「慣れ」というものを持っている。それにより、ユフィールは平然としていた。
飛竜の舌は、細くて長い。その為、舌先は器用に動き、ペタペタと食べカスを貼り付けていく。全てのカスを食べると、満足な表情を浮かべていた。また、何処で礼儀作法を覚えたのか、深々とユフィールに向かって頭を垂れる。それも、両方の前足をちょこんっと揃え。
身体が大きく外見は怖いディオンだが、心は繊細で可愛らしい。嫉妬によって以前は襲い掛かったりしていたが、それは子供っぽい一面を持っていたからだ。だからこの姿が、本来のディオンだ。
「ユフィール」
「はい。此方です」
「ディオンの食事、終わった」
「今、終わったばかりです」
「そう。じゃあ、一緒に出掛けようか」
言葉を掛けてきたのは、ウィルだった。突然のウィルの言葉に一瞬ユフィールは驚く素振りを見せたが、嬉しそうに頷く。ウィルの誘いを断るわけが無い。彼女はウィルが行く場所であったら、何処へでも行ってしまう。それだけ、ウィルのことが大好きであったのだ。