ユーダリル
しかし、いつまでもへこんでいる暇は無い。仕事を請けたからには、きちんと全うしなければいけないからだ。それに、新マスターエリアの命令は絶対的。何より、信頼に関わる。
ウィルの仕事は、評判がいい。それは長い年月をかけて、築き上げていったもの。だが信頼を崩すのは、一瞬のこと。実兄に対する周囲の評判と評価を知っているので、勝手に身体が動く。
「さて、準備をしよう」
半分吐き捨てるように言葉を言うと、ウィルは立ち上がる。そしてポキポキと骨を鳴らすと、短い溜息をつく。
その光景を、間近で見ていたユフィール。その時何を思ったのか、爆弾発言を言ってきた。
「私も、一緒に行きたいです」
「準備? それならいいよ」
「いえ、仕事の場所に――」
「えっ!?」
一体、何を言い出すのか。
ウィルは、動揺を隠し切れない。
大人しい性格で有名なユフィールが、トレジャーハンターの仕事に興味を持つ。無論、冗談ではない。
「駄目だよ」
「その……興味がありまして……ただ、ウィル様を待っているのは、寂しいところがあります」
「危険だよ」
「それは、わかります。わかりますけど……本当は、ウィル様のことが心配なのです。以前。怪我をなさいましたので……」
「そ、そうだけど」
「……お願いします」
どうしてこのようなことを言うのか、理解するのが難しかった。
ウィルは、ポリポリと頭を掻いていく。と同時に、セシリアの顔が脳裏を過ぎった。セシリアは、ウィルの味方をしてくれる。
そのように懇願されても、ユフィールを仕事を行う場所に連れて行くことは絶対にできない。
何だかんだで、アルン同様にセシリアは過保護な部分があるからだ。怪我をさせた場合――血の気が引く。しかし、ユフィールはウィルを心の底から心配している。やはり、仕事内容に問題が大きい。といって、この仕事は面白い。簡単に止められるものではないので、ジレンマに陥る。