ユーダリル
それにより、きちんとスケジュール管理をしないといけない。やはり、遅刻は厳禁だから。
「これは、どうすればいいんだ」
「それも、わからないのですか?」
「痛い言い方だ」
「ウィル様は、ご存知です」
「そ、そうか」
実弟ができて、自身ができない。これほど、屈辱的なことはない。アルンは、常にウィルの上に立ちたいと思っている。よって、セシリアに助けを求めるのを止め、努力で突き進む。
決して、セシリアは意地悪をしているのではない。アルンは、何でもかんでも他人に頼む、悪い癖を持っている。それを少しずつ修正していこうという、セシリアの努力が隠されていた。
「終わりましたら、仕事です」
「わかっている」
「頑張られているアルン様に、ひとつだけいいことを話そうと思っています。宜しいですか?」
「何だ」
「周囲の信頼が、回復しました」
「今まで、無かったのか」
それを聞いたセシリアは、項垂れてしまう。
今まで、全く気付かなかったというのか――
鈍感を通り過ぎて、馬鹿といってもいい感性に、セシリアは心の中で何度も溜息を繰り返す。
「周囲は、何も言わなかった」
「普通は、言いません」
「そういうものか」
納得した表情を浮かべているアルンに、今度は肩を竦めてしまっていた。実は、嘘を付いていたのだ。
確かに周囲の者達は、言葉に出してアルンを批判することはない。これでも一応、社長の地位に就いている人物。機嫌を損ねて首を切られたら、洒落にならないからだ。よって、態度で示していた。
他所他所とした態度は、嫌でも目立ってしまうもの。しかし、アルンは――これも、唯我独尊状態の我儘性格が関係しているのだと、セシリアは考える。ふと、内心思ってはいけない考えが思い付いてしまう。それは「一度、会社が潰れた方が……」という危ない考えだ。