ユーダリル
お願い。
短い言葉であったが、それで十分だった。ユフィールは何度も嬉しそうに頷くと、買う物を半分持とうとするが、いかんせん体力が違う。それにより、自分が考えていた量を持つことができなかった。
しかし、それでいい。ウィルも、女の子に大量の荷物を持たせようとは思っていなかった。それに、気持ちが嬉しい。また、ユフィールと一緒にいることができて、幸せであった。
仲がいいオーラ全開。
だが、唯一不満の者も存在した。
その人物というのは、店主であった。五十代前半の人物が、十代代の男女に嫉妬――というのは、何だかおかしい。だが、それには複雑な背景があった。そう、店主は昨日から奥様と仲が悪い。所謂、夫婦喧嘩を行ったのだ。そのような背景が関係し、物凄く機嫌が悪い。
お陰で、二人はとばっちりを受ける。
カウンターへ行き、支払いの準備をしているのはユフィール。一方のウィルは「忘れ物をした」ということで、違う消耗品を取りに行っている。それにより、ユフィールに集中攻撃がいった。
「金」
「お幾らでしょうか」
「自分で、計算しろ」
「値段が、わかりません」
「そんなの自分で調べろ」
夫婦喧嘩の真っ最中の中で、仲のいいカップルを見る。これほど屈辱的なことはなく、同時に意地悪心が芽生える。一度火が点いてしまった簡単に消すことはできないので、更に口調が悪くなっていく。
「女が、何に使う」
「私ではないです」
「じゃあ、男へ貢ぐのか」
「貢ぐ?」
「何だ、そんな言葉もわからないのか」
純粋培養に等しい生活を送っていたユフィールにとって「貢ぐ」という言葉は、別世界の単語。
勿論、その意味を理解していない。ユフィールは首を傾げると、どのような意味か尋ねる。すると店主は、ケラケラと笑う。どうやら知識が乏しいユフィールを、徹底的に貶そうと思っているらしい。しかし、それが長く続くことはなかった。そう、ウィルが来たのだ。