ユーダリル
「騒がしいね」
「ウィル様。貢ぐって何でしょうか」
「……はあ?」
「この方が、言っていました」
「へえ、そうなんだ」
刹那、ウィルの目付きが変化した。彼にしてみれば、ユフィールに何を言っているのかというところだ。全身から、どす黒いオーラを漂わせる。それは殺気に等しく、店主を睨み付ける。
「不潔だ」
「本当だろう」
「其処まで、言いますか。ユフィール、ちょっと奥へ行ってくれるかな。ちょっと、話があって……」
「は、はい」
「大丈夫。血は見ないから」
口許は笑っているが、目は笑っていない。それに、両頬が引き攣っている。普段のウィルではないと瞬時に判断したユフィールは、背中に冷たい物が流れ落ちていく。勿論、反論は不可。ユフィールは、ゆっくりとした足取りで店の奥へ行くと、ウィルの爆発に備える。
次の瞬間、ウィルの絶叫が響いた。
流石、アルンの弟。
こういう面では、そっくりであった。
まさかこのような反論が来るとは思わなかったのか、店主は戦いている。と同時に、これほどの迫力を持っている人物と見抜けなかったことに、激しく後悔している。だが、これで終わったわけではない。
長々と続く、ウィルの言葉。どうやらユフィールが関わると、性格がぶっ飛んでしまうようだ。
それに、今回の買い物は「貢ぐ」とは全く関係ない。二人で仲良く買い物をしているのを邪魔し、勘違いしている。腹立たしく、実際に許されるのならウィルは首を絞めている。それだけ、頭に血が上っていた。
一応、理性は働いている。よって、越えてはいけない一線の前で何とか踏み止まっていた。
カラン
永遠と続くのではないかと思われたウィルの言葉。それを遮るかのように、店の扉が開き鐘が鳴った。その音にウィルの言葉が止まり、店主は扉の方向へ視線を向ける。入店してきたのは、二十代に近い若者。どうやら、買い物に来たらしい。しかしこの若者の来店で、更なるトラブルが発生した。