ユーダリル

『あっ!』

 店内に、間の抜けた声が響く。

 ウィルは入ってきた人物を指差し、相手側は戦く。

 二人の間に、微妙な空気が漂う。

 それに挟まれているユフィールは、二人の顔を交互に見る。

 だが、言葉が出ない。

「き、貴様!」

「やあ、元気」

「見れば、わかるだろう」

「そうだね」

 頭に血が上っているのか、相手は激しい剣幕でまくし立ててくる。一方のウィルは、のほほんっと構えていた。勿論、その態度は相手の逆鱗に触れる。お陰で、更に怒りが増していった。

「まあまあ」

「落ち着けるか」

「ウィル様。その……お知り合いですか」

 やっとの思いで、口を開いたユフィール。しかし横からの口出ししたことが恐ろしいのか、オドオドとしている。だが、ウィルが怒りを露にすることはない。彼は苦笑すると、相手との関係を語る。

 簡単に説明すると同業者。

 それも、ウィルを勝手にライバル視している困った人物らしい。勿論、相手にしていないという。

「ストーカーだ」

「お、恐ろしいです」

「だろう。困ったものだよ」

「通報しませんと」

 刹那、相手からの突込みが入る。

 だが、ウィルは綺麗に横に流した。

 要は、いちいち相手にしているのが面倒なのだ。

 だが、相手は何度も絡んでくる。

 彼の名前は、ゲーリー。年齢は、18歳とウィルの年上。それだというのに、精神面は子供に等しい。

 いや、これには理由が存在する。ウィルは、あのアルンの弟。本人達は否定しているが、裏の性格は一緒といって過言ではない。それによりゲーリーを玩具のように扱い、遊んでいることが多い。尚且つ、仕事の面でウィルの方が上なので、ストレスは溜まりに溜まっていた。
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