ユーダリル

 感情が、一気に爆発する。

 しかしウィルは、簡単に横に流していく。

 飄々とした態度に、ゲーリーは宣戦布告とも取れる言葉を言った。

「勝負だ!」

「はあ?」

「勝負ったら、勝負だ」

「何で」

 いまいち理由がわからない。

 ウィルは何度も首を傾げ、真意を聞き出そうとするが、ゲーリーは興奮しているので回答を得られない。

 何とか落ち着かせようと試みる。

 だが、差し出した手は振り払われ、威嚇し攻撃スタイルを取る。こうなると、完全に手が付けられない。

「困ったな」

「困ったのは、此方もそうです。喧嘩でしたら、外で行って頂けないでしょうか。客の迷惑になります」

「ああ、御免御免」

 店主の言葉にウィルは、ゲーリーを連れ店外へ出て行く。一方ユフィールは危害が及んではいけないと、店内でお留守番。

 しかし、心配で仕方がない。

 店内をウロウロと歩き回り、時折扉に視線を向ける。だが約束を守らないといけないので、扉を開くことはない。

 ウィルは無事か。

 怪我をしていないか。

 殺人事件に、発展しないか。

 想像は、悪い方向へ働いていく。

 珍しく、ユフィールが大胆な行動を取る。彼女は出入り口の扉に耳を当てると、盗み聞きをはじめた。

 ヒソヒソとした声音が、聞こえてくる。

 しかし、明確な内容はわからない。

 それでも、聞き耳を立てる。

 刹那、扉が開いた。

 目の前に登場したウィルに、ユフィールはか細い悲鳴を発してしまう。また突然の悲鳴にウィルは戦き、何か悪いことをしたのか尋ねる。勿論、相手に罪はない。ないが、それを言葉に出すことはない。それにより、ゲーリーからの鋭い突っ込みが後方から入れられた。
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