ユーダリル
的を射た内容に、ウィルは笑いながらゲーリーの足を踏む。現在の状況で突っ込むことは、確実に死を招く。
流石、アルンの弟。
冷徹な部分も似ていた。
容赦ない攻撃に、ゲーリーは声にならない悲鳴を発する。相当痛かったのかしゃがみ込み、肩で呼吸していた。
「ウィル様!」
「何?」
「何をなさっているのですか」
「足を踏んだ」
「それは見ればわかります」
ユフィールにしてみれば、どうしてゲーリーの足を踏んだのか理由を知りたかった。彼女にしてみれば、理由もなしに相手をどうこうしてほしくはない。勿論一番いいのは、暴力を用いないこと。
しかしウィルは、暴力を振るった。
それを問い詰めないといけない。
驚くウィルに、詰め寄るユフィール。
そして、足下で呻くゲーリー。
三者三様の姿に、店主は何度も溜息をつく。
先程「外でやってほしい」と頼んだばかりだというのに、今度は大人しいユフィールが騒ぎ出す。
いい加減にしてほしい。
店主は再度「外にやってほしい」と言う。
「す、すみません」
「別に、謝らなくていいよ。手を出して、喧嘩をしているわけではないんだから。それに、二度も煩い」
一回目の指摘を受け入れたのだが、流石に二回も言われると耳障り。また、先程の出来事を忘れたわけではない。店主はユフィールに、冷たく当たった。それを根に持っているウィルは、毒を吐く。
ユフィールの件とゲーリーの件。
その二種類は、確実にウィルの性格を悪い方向へ持っていった。こうなると、簡単に止められない。
弁論も長けている。お陰で、立て板に水状態だった。ユフィールは止める方法が見付からないのか、横でオロオロとしている。一方のゲーリーは痛みが治まらないのか、いまだに唸り続けている。しかし復活を果していても、話の中に入ることはしない。彼は、他人と決め込んでいた。