ユーダリル

 だが同時に、準備の手伝いをしたいと言い出す。やはり、ウィルに勝ってほしい。その為の協力は惜しまない。

 決闘の前日から美味しい料理を作り、次の日は栄養価の高い弁当を作る。それを持ち、頑張ってほしい。

 彼女にとって決闘は、遠足に等しい。

 キラキラと瞳が輝いていた。

「弁当は嬉しいね」

「ウィル様のお嫌いなピーマンは、入れません。食べて気分が悪くなってしまったら、いけませんので」

「あ、有難う」

 流石に、決闘の当日にピーマンは精神と肉体の両方にダメージがいく。下手したら食べた物を吐き出し、長時間寝込んでしまう。それでは決闘にならず、ゲーリー相手に不戦勝は痛い。

 雰囲気的に、ピーマンを除外しないといけないとわかってくれたユフィールに、素直に感謝する。

 今回、何が何でもゲーリーに勝たないといけない。

 そして、徹底的に潰す。

 二度と、決闘を挑まないように。

 だからこそ、今から気合が入った。

 ふと、ユフィールが疑問を投げ掛ける。

 それは、ゲーリーという人物の正体であった。

 当初、ウィルの同業者と思っていた。仕事の上のいざこざが発展し、今回の決闘に至ったと思ったが、どうやらそれが違うらしい。不信感を抱いたユフィールは、正直に言って欲しいと頼む。

 その質問に、ポリポリと額を掻く。相当言い難い内容なのか、ウィルは苦笑いを浮かべていた。

 しかし、口を開く。

 そして心情を加え、語っていった。

「彼は、貴族の坊ちゃんなんだよ」

「そのように見え……はっ! 失礼しました」

「いいよ。そう思っている人物は、多かったりするから。で、彼は貴族の三男だから気楽なんだ」

 彼は、昔から冒険に憧れていた。その延長線で、トレジャーハンターの道を選ぶ。ゲーリーの仕事の仕方は、悪くはない。しかし評価の面では、ウィルの方が高い。その為、必然的にウィルに仕事を頼む人が増える。だからといって驕り昂ぶっているわけではないが、彼は気に入らないらしい。
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