ユーダリル
絶対にウィルに勝つ。
その思いで、彼は動いていた。
そして、ユーダリルを代表するトレジャーハンターになりたいと強く願い、今に至っている。
貴族に見えない貴族。
これが、ゲーリーの特徴。
どちらかといえば野生児に近く、彼も苦労もしている。それによりこのような性格でなければ、ウィルといい友達になっていただろうが、いかんせんそれは無理な相談になっていた。
お陰で、対立構図を生み出す。
「さて、兄貴に報告」
「するのですか?」
「しないと、後々煩いから。途中で兄貴が口出ししてきたら、決闘にならないからね。邪魔だし」
「ウ、ウィル様」
「だって、本当だよ」
過去の経験上、アルンは必ず口を出す。
最終的に邪魔をして、徹底的にぶっ潰す。
最近ウィルは、自身の身の回りで起こっている出来事を把握してきている。その大半にアルンが関わっており、迷惑を被っている人物も増えていっていることをセシリアから聞いている。
だからこそ、報告は欠かせない。
「見学……いいでしょうか」
「決闘?」
「ウィル様が、心配ですので」
「安全な場所ならいいよ」
「わかりました。ウィル様が、そのように言うのでしたら。本当なら、お側で見ていたいのですが……」
「駄目」
ユフィールの言葉が、途中で遮られる。
決闘となると、何が起こるかわかったものではない。その危険な状況に、ユフィールを巻き込むわけにはいかない。
ウィルにしてみれば、安全な場所で見守ってほしいという気持ちが強い。それに彼女が怪我した場合、どのように責任を取ればいいかわからなかったからだ。だからこそ、危険は未然に防ぐ。ウィルの心情を理解したのか、ユフィールは無言で頷き、素直に受け入れた。