ユーダリル

 ヒラヒラと手を振る。

 これこそ「出て行け」という合図だった。

 流石に、このような態度を取られると、素直に従うしかない。それだけ、エリアは恐ろしかった。

 二人は、コソコソと建物から出て行く。

 瞬間、黒い物体が目の前に現れた。

「ディオン」

 ウィルが、黒い物体の名前を呼ぶ。

 そう、目の前にいたのは相棒のディオン。相手のもウィルの登場を喜んでいるのか、顔を摺り寄せてきた。

「どうして、お前が……」

「あの……ウィル様」

 オズオズとディオンの後ろから登場したのは、ユフィール。手にはバスケットが握られ、佇んでいた。

 ユフィールの登場に、ゲーリーが冷たい視線を向ける。彼自身、彼女はいない。羨ましくて、嫉妬心が湧く。だが、言葉に出すと二度目の足踏み攻撃が待っているので、精神的圧力を掛ける。

 しかし、ウィルに効き目はない。

 流石、アルンの弟。

 これくらいは、大したことはない。

 その証明に、話を進めていた。

「今から、決闘をはじめるよ」

「わかりました。では、ディオンを――」

「勿論、そのつもり。場所が場所だからね。ディオンと一緒の方が、行くのは楽だったりする」

「では、私は建物の中で待っています。ウィル様、お気をつけて。美味しい食事を持ってきましたので」

「有難う。じゃあ、ディオン」

 名前を呼ばれたディオンは、ウィルを背中に乗せる為にしゃがみ込む。刹那、尻尾を振った。

 何と、ゲーリーが触ろうとしていたのだ。

 見知らぬ人物に、触れてほしくない。

 ディオンは、全身で拒否反応を示す。流石、飛竜の攻撃。身体に当たらなかったが、衝撃波で髪と吹くが揺れる。

 その恐ろしい攻撃に、全身から汗が噴き出す。このような危険な生き物を懐かせているウィル。
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