ユーダリル
それなら、外でお留守番がいい。
ウィルは言い聞かせるように、説明していく。
当初駄々を捏ねていたディオンだが、ウィルからの命令と渋々ながら受け入れることにした。
これで、心配事はひとつ減った。
後は、武器と道具を持ち入るだけだ。
腰に鞘に納められた剣を刺し、道具が入ったリュックを背負う。そして自身に気合を入れ、入って行く。
その時、聞き覚えのある声音が響いた。
「もう、来たのか」
「わ、悪いか」
「肩で息をしているね」
「駆けてきたからね」
「おお、凄い凄い」
ウィルの目の前に現れたのは、決闘の相手ゲーリー。全速力で走ってきたのだろう、全身が汗で濡れている。決闘前から、体力の大半を使い果たしてしまっていたが、目付きはやる気満々。しかし同時に、心配になってしまう。両脚がガクガクと震え、立っているのも辛そうだった。
「止める? 疲れているでしょ」
「止めるか!」
だが、肩で息をしている中で叫んだ為、咳き込んでしまう。見兼ねたウィルが背中を擦ろうとするが、寸前で避ける。ライバル視している人物に、同情を掛けてもらいたくないが、身体は正直。
ゲーリーは崩れ落ち、身体をヒクヒクと痙攣させていた。こうなってしまうと、決闘もままならない。
「待ってようか」
「何?」
「こんな状態だと、決闘ができないだろう? だから、お前が復活するまで待っていようかと」
「いい!」
「じゃあ、行く」
人間、言葉と態度が伴わないもの。ゲーリーは、ウィルの服を掴み離さない。互いの間に、微妙な空気が漂う。ウィルは無言で掴んでいた手を離すが、再び服を掴まれる。しかし、それは許されない。
男が一度言ったことを守らないといけないもの。
その為、非情に振舞う。