ユーダリル

 しかし、自分から挑んだ決闘。

 途中放棄はできない。

 ゲーリーは自身に気合を入れると立ち上がり、ウィルの後を続くように洞窟の中に入って行った。




 先に洞窟に入ったウィル。

 リュックからランプを取り出すと、火を灯す。

 その瞬間、淡い光が洞窟を照らす。

 本当にこの場所に、危険生物が生息しているのか。ウィルは首を傾げつつ、更に歩みを進めた。

 ふと、足が止まる。

 ゲーリーは、復活したのか。

 決闘相手であったとしても、心配になってくる。だが、救いの手を差し伸べるまでにはいかない。

(さて、どうしようか)

 危険洞窟ということで、今までトレジャーハンターが入ったことはない。その為、中の構造がわからない。今のところなだらかな道が続いているが、いつ変化するかわかったものではない。いきなり、目の前の道がなくなったりする場合もある。それにより足下を照らしつつ、進む。

 その時、ウィルの足が止まった。

 周囲に、不穏な気配が漂う。

 気配の主は、人間ではない。それに獣独特の臭いが、鼻に付く。ウィルは瞬時に身構えると、腰に刺してある剣に手を掛ける。しかし相手も警戒しているのか、姿を見せることはない。

(外の獣と違う)

 洞窟の外に生息している生き物は温和で、殺気を出すことはない。だが、洞窟の生き物は違う。

 邪魔者は出て行け。

 そう言いたいのか、殺気はますます強くなっていく。

(怪我したら、煩いな)

 怪我をせずに決闘を終わらせたいと思っていたウィルであったが、現在の状況を考えるとそれは難しい。

 それに怪我をした場合、心配する者も多い。アルンより先に、ユフィールの顔が浮かぶ。彼女の泣き顔は苦手であったので、どう切り抜けばいいか考えていく。心臓が激しく鼓動し、呼吸が荒くなっていく。
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