ユーダリル

 ウィルは剣を鞘に納めると、三匹の子供の側へ行くとしゃがみ込む。子供達は人間を恐れているのか、クリクリとした目が涙で濡れている。しかしその中の一匹が勇気を出し、ウィルの匂いを嗅ぐ。

 するとウィルのことが気に入ったのか、全身を摺り寄せてきた。それを見た残りの二匹も、擦り寄ってくる。

「可愛いな」

 洞窟の中には凶暴な生き物が生息していると言われていたが、このように懐かれると可愛らしい。ウィルは3匹の子供の頭をそれぞれ撫でていくと、ゲーリーの方に視線を向けた。

「凶暴じゃないぞ」

「俺は違う!」

「お前が、何かやったんじゃないか」

「何もやって……」

 しかし、其処で言葉が止まった。

 どうやら何か悪いことを行ったのだろう、急に視線を逸らす。刹那、狼がゲーリーの身体に乗った。

「く、苦しい」

「やっぱり、やったな」

「ちょっと狼の子供の額を、指で弾いただけだよ。それだけなのに、こうやってこいつが……」

「お前が悪い」

 間髪いれずに、ウィルの言葉が飛ぶ。

 どの世界も、親は命をかけて子供を守る。ウィルとアルンの両親は世間一般からずれている部分があるが、なんだかんだで二人の子供を大切にしている。特に、母親クレアは最強だ。

 それを思うと、ゲーリーに攻撃を仕掛けている理由がわかる。まさに、自業自得であった。

「助けて欲しい?」

「も、勿論」

「じゃあ、金」

「金を取るのか!」

「勿論!」

 ヒラヒラと手を振り、金を請求していく。相手がゲーリーでなければ、無料で助けようと思う。だが、相手が相手。きっちりと金を請求し、これからの生活費に役立てようと思う。一瞬金の請求に対し渋い表情を浮かべていたゲーリーだが、命には代えられないと受け入れた。
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