ユーダリル
「交渉成立」
ウィルは満面の笑みを浮かべると、胸元に三匹を抱き締める。そして親の側へ行くと、狼の顔を凝視する。
相手も同じように、ウィルの顔を凝視する。
そして一拍した後、可愛らしい声音で鳴いた。
「おっ! 可愛い」
「な、何でだ」
「日頃の行い」
「く、くそ」
「ほら、気を荒くしない。そうすると、こいつも襲ってくるぞ。殺気は禁止。なあ、そうだろう?」
人間の言葉を理解できるのか、ウィルの語り掛けに狼は頷く。そしてムギュっと、ゲーリーの頭を踏んだ。
まさか、獣に頭を踏まれるとは――
屈辱的な出来事に、涙を浮かべる。
「決闘、止めるか?」
「な、何で」
「この場所は、こいつらの巣だよ。親は子供を守る為に襲い掛かったみたいだし、邪魔だからね」
「それなら……仕方ない」
今度は、素直に受け入れる。
何より、これ以上攻撃を仕掛けられると、何をされるかわかったものではない。ゲーリーは何度も溜息を付くと、ウィルに狼をどかして欲しいと頼む。最初ウィルに頼むのを拒んでいたが、背に腹はかえられない。
「じゃあ、仲良く」
「えっ! ぶも」
助ける場合、三匹を下に地面に下ろさないといけない。ウィルはゲーリーをからかおうと、彼の目の前に置く。その瞬間、三匹が顔に飛び付き鼻と口を塞ぐ。その為、呼吸ができなくなってしまった。
「懐かれているな」
「く、苦しい」
「懐かれないより、いいじゃないか。さて、この馬鹿の上から降りてくれるかな。死なれると困る」
ウィルの言葉に狼は可愛らしく鳴くと、ゲーリーの上から降りる。しかしまだ気に入らない部分があるのか、降りた後尻を踏む。勿論、容赦ない攻撃であったので、ゲーリーが呻く。