ユーダリル

「生きている?」

「な、何とか」

「立つ」

「ちょっと、休憩を――」

 今、肉体と精神がボロボロだった。

 広い洞窟を照らしているのは、ランプの明かり。その為顔色は判断できないが、ウィルは漂う雰囲気で、彼が瀕死の状態だということがわかった。

 本来であったら、苛めてもいい。

 しかし、苛める気にはならない。

 その訳は、子供の狼と遊ぶのが楽しいからだ。

「ユフィールが見たら、喜ぶな」

「惚気」

「襲っていいよ」

「け、嗾けるな」

「お前が悪い」

 現在、ウィルの方が有利な立場に立っている。親の狼を含め、三匹の子供達も懐いている。

 こうなると、圧倒的に不利だ。

 そう判断したのか、ゲーリーは口をつむぐ。

「時々、遊びに来たいな」

「……物好き」

「野生生物に好かれない奴が、煩い」

「お前は、特別だよ」

 自分とウィルの差に、嘆き悲しむ。

 同じ人間で、どうも違うのか。

 ゲーリーは両手で顔を覆うと、シクシクと泣き出す。すると一匹の子供の狼が、慰めるように近付いてくる。その優しさに感動したゲーリーが両手で抱き締めようとするが、相手が噛み付いてきた。

「いてーーーーー!」

「馬鹿だ」

「何で、こんなに拒絶するんだ」

「聞かれても、わからない」

 動物に好かれる好かれないは、その人物の産まれ持っての特徴。それを説明せよというのは難しいが、唯一説明できる点はある。それは、生き物に対して好戦的な部分だった。野生生物相手に、好戦的態度を取ってはいけない。逆に、襲って欲しいと言っているようなもの。
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