ユーダリル

「早いね」

「し、死にたくない」

 予想以上に早く洞窟から出てきたゲーリーに、ウィルは冷ややかな視線を向け言葉を掛ける。いつもの彼であったら反論の言葉が返ってくるが、今肩で呼吸を繰り返しへばっていた。

 それを見たウィルは、やれやれと肩を竦める。トレジャーハンターは、体力勝負の職業だ。

 それだというのに、この様。これで名前を残すトレジャーハンターになりたいというのだから、先が思い遣られる。

 だが、能力がないわけではない。

 要は、運がないだけだ。

 ウィルはゲーリーを「ストーカー」と呼んでいるが、本心で嫌っているわけではない。本当に嫌っているのなら決闘を受け入れ、このように付き合っていない。それにこのような姿を見ると、実に情けない。

 その時、ゲーリーが呻き声を共に本音を言う。それを聞いたウィルは、本気なのか尋ねた。

「いや、俺も一緒に……」

「おい! さっき、物好きって」

「気が変わった。俺も、奴らを懐かせる。美味しい食べ物を持ってくれば、気に入ってくれる」

「……単純」

「煩い」

「本当のことを言っただけだよ。まあ、そう言うのなら頑張れ。協力は……ちょっとだけする」

「ほ、本当か。お前って冷たい奴だと思っていたけど、意外にいい奴なんだ。再発見したよ」

 言葉の端々に、嫌味が含まれているのは気のせいか。ウィルは、顔を引き攣らせてしまう。

 しかし、何とか耐えていく。ここで感情を爆発させると、本気でボコボコにしてしまうからだ。決闘なのだから、それを行ってもいい。だが、なんだかんだでイメージに関わってくる。だからこそ懸命に感情を抑え、ゲーリーの提案を受け入れ、どうすればいいか計画を練る。

「餌だね」

 それを聞いたゲーリーは、どのような餌がいいか考えていく。相手は狼なので肉系統が最適だが、ユーダリルで手に入る肉は干し肉が大半。生の肉は貴重なので、大金を使わないと手に入れることができない。
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