ユーダリル
一体、どちらを選べばいいのか。
ジレンマに陥る。
腕を組み真剣な表情をしているゲーリーに、ウィルは早く決断を出すように促すが、相手からの回答はない。それどころかますます深く考え込み、最終的には唸り声まで出していた。
「どうした?」
「餌が……」
「餌なら、肉でいいだろう」
「そうだけど、問題は金だ」
「ああ、高いね。でも、お前の家は……」
「俺は、三男だ。金を使っているのは、長男と次男。俺に回ってくる金は、ほんの少しなんだ」
それを聞いたウィルは、自分の同じ立場に置かれていると知る。ウィルもアルンに財布の紐を握られ、金を好き勝手に使えない。当初「嫌な奴」と思っていたゲーリーだが、親近感を覚えてくる。
だからといって、馴れ合いには至らない。それは、今までのストーカーの件が関係していた。
しかし、ちょっとだけ協力すると言ったので、手を貸さないわけにもいかなかった。ウィルは腕を組むと、格安で手に入らないか考えていく。だが、なかなかいい場所がない。アルンのように手広く商売をやっているのなら別であるが、ウィルの職業はトレジャーハンター。
肉の売買は行っておらず、それ関連の主人に知り合いはいない。こうなると、アルンに頼むしかない。
だが、アルンに頼るのも憚れる。
後々、数倍の見返りを要求される確立が高い。今度は、ウィルの方がジレンマに陥ってしまう。
「乳製品じゃ駄目か」
「食ってくれるかな」
「さあ、与えたことがない。でも、試しにあげるというのもいいかもしれない。これなら、手に入るし」
「よし! 買いに行くぞ」
「こっちは用事あり。だから、お前一人で」
今回の決闘の結末を、ギルドマスターに報告に行かないといけない。ゲーリーが買い物に行くのなら、その役目はウィルにある。それを聞いたゲーリーは当初「一緒に行こう」と言っていたが、彼もギルドマスターの性格と態度を熟知しているので、無理に引き止めるのを止めた。