ユーダリル
ユーダリルのトレジャーハンターの中で、一番評判がいいのがウィル。ギルドマスターのところに行くのは、彼が適任だ。逆にゲーリーが行った場合、ぶっ飛ばされるのは間違いないだろう。それを身を持って知っているゲーリーは、ウィルの意見に従うしかなかった。
「適当に、誤魔化しておくよ」
「……有難う」
「おっ! 素直だ」
「相手がギルドマスターなら、仕方ないよ。以前のギルドマスターは、何だかんだで優しかった」
「それ、同感。でも、そうなってしまったのは兄貴のせいだし……だから、何とかするから」
「おう」
ウィルの言葉に、ゲーリーは軽く返事を返す。それに対しヒラヒラと手を振ると、ディオンの背に跨り、ギルドへ向かう。その姿にゲーリーは大きく手を振り見送るが、同時に盛大な溜息をついた。
◇◆◇◆◇◆
「という訳です」
その説明に、ギルドマスターエリアはクスクスと笑う。彼女にとっては、この笑いに特に意味を込めてはいないが、ウィルにしてみれば命が縮む思いがし、冷や汗を浮かべてしまう。
「顔色が悪いわ」
「そ、そうでしょうか」
「遠出したから?」
「た、多分」
「そう。では、お茶の用意を淹れましょうか。いい茶葉が、手に入ったのよ。どう、一緒に」
「結構です!」
恐怖に戦くウィルは、反射的に断る。本来であったらエリアの好意を受け取るべきであるが、見知らぬ何かが「危険」と訴え掛けてきた。それだけ、エリアの圧力は半端ではない。
いつまで、これに耐えないといけないのか。彼にしてみれば相談後、すぐに退散するつもりであったが、このように捕まってしまった。本音としては、早くゲーリーのもとへ行きたい。しかしそれを口にしてしまうと、どのような反応が返ってくるのか簡単に予想がつく。