ユーダリル

 こうなったら、暫く耐えるしかない。ウィルは身体を小さくしながら、エリアの話を聞く。

 途中溜息をついたり頬を掻いたりして、早く話を止めて欲しいと訴えていくが、エリアが気付くことはない。それどころか、身の上話や自身の夫に対しての愚痴を永遠と続けていく。

 それも、四十分近く。

「貴方、聞き上手ね」

「そ、そうでしょうか」

「ええ、だって楽しいもの」

「あ、有難うございます。その……あの……ゲーリーが、待っていますので……そろそろ行って……」

「ああ、そうね。引き止めてしまって、御免なさい。いいわ、行きなさい。また、来て欲しいわ」

 その言葉に、ウィルは過敏に反応してしまう。エリアに気に入られたことは嬉しいが、反面プレッシャーを感じてしまう。こうなると話し相手として、強制的に呼び出しされるだろう。

 恐怖が全身を駆け巡り、身震いをしてしまう。同時に、血の気が一気に引いていく思いがした。

「で、では……」

「ああ、待ちなさい」

「な、何でしょうか」

 扉から出て行こうとした瞬間、呼び止められる。慌てて振り返り身構えると、エリアの顔を見詰める。どうも彼女の言葉に過敏に反応する体質になってしまったらしく、身構えたまま固まる。

「お土産」

「……えっ!?」

「お菓子、好きでしょ? だから、持って行きなさい。あのゲーリーって子と一緒に食べなさい」

「有難う……ございます」

「いいのよ。気に入った相手に送るのだから。でも、仕事をきちんとやってくれると嬉しいわ」

 過度の期待に、何も言えなくなってしまう。こうなったら真面目に仕事を行わないと、何を言われるかわかったものではない。

 ウィルは震える手で菓子が入った箱を受け取ると、そそくさと部屋から退出する。そして、ゲーリーと決闘を行った場所へ急ぐ。彼にしてみれば早くエリアの圧力から逃れたかったので、ディオンにトップスピードで飛ぶように命令する。
< 220 / 359 >

この作品をシェア

pagetop