ユーダリル
ディオンもウィルが焦っていることを雰囲気で感じ取ったのか、頑張って両翼を動かし目的地に向かう。しかし予想以上の速度で飛んでいたので、着陸に失敗してしまう。何と両足は地面の上を滑り、そのまま背の低い木に頭から突っ込んでしまう。突然の出来事に、ゲーリーの悲鳴が響く。
「大丈夫か!」
「な、何とか」
「助ける」
「いや、ディオンを――」
髪に刺さった枝と葉っぱを抜きつつ、ディオンの救出を求める。いつもの彼であったら拒絶の意思を表していたが、今日のゲーリーは違う。二人の間に友情が芽生えたのか、瞬時に動く。
互いに目配せすると、ディオンの尻尾を掴む。そして掛け声と同時に、一気に引っ張り出した。
ディオンが、転がり出てくる。その巨体に潰されないように瞬時に避けると、これまた同時に溜息をついた。
「有難う」
「いや、構わないよ。で、ギルドマスターはどうだった。あの方のことだから、何かを言っていそうな……」
「何も」
「珍しいね」
「あの方のことだから、結末がわかっていたのかもしれない。変に勘が良くて、鋭いからね」
その言葉に、ゲーリーは引き攣った笑いをする。どのように頑張ったところで、マスターエリアに勝つことができない。なら、共同戦線を張って立ち向かうしかない。次の瞬間ゲーリーは、手を差し出した。
一瞬、何を言いたいのかわからなかったが、ヒラヒラと動かしている手で何となく意味を悟る。
ウィルも同じように手を出すと、ガッチリと握手を交わす。この時、二人の間に友情が芽生えた。
「これから、頑張ろう」
「お、おう! で、苛めないで」
彼にとって、此方が重要だった。その為手を握りつつ、身構えている。だが、ウィルは友情関係になった相手を苛めようとは思わない。今まで憎らしい相手と思っていたが、現在は同情心の方が強い。しかし苛めは行わないが、からかったりはする。その証拠に、握り締める手に力を込めた。
「い、痛い」