ユーダリル

「ついつい」

「まさか、俺を……」

「条件反射だよ。ほら、今まで苛めていたし。それが関係して、ついついやってしまうんだ」

 ウィルは本音を言っているが、ゲーリーは冗談で言っていると勘違いしてしまう。これも今までの経験が関係しており、簡単に受け入れることはできなかった。その結果、顔が引き攣っている。

「信用ないんだな」

「苛めた期間が、長いからね」

「そうだった?」

 此方は、冗談で言った言葉。しかし先程の出来事があるので、ゲーリーは本気で捉えてしまう。その為握っていた手を振り解くと、ウィルとの間に距離を取ると反射的に身構えた。

「仲良くなるんじゃないの」

「言葉が信用できない」

「悪かったよ。今度は、本当のことを言うから。お前と一緒に、仕事をしてみたいと思っている」

「本当か?」

「冗談と思っているのなら、それでもいいよ。お前と似ている部分があるから、仲良くて切ると思ったのに」

 分かり合える仲を期待していたのに、ゲーリーが拒絶の意思を表している。これにより完全に決別しようと考えていたウィルであったが、ゲーリーはそうではないと言いたいのか必死に食い付く。

 ウィルに比べて、友達が多い方ではない。そして今、友達を一人増やすチャンスでもあった。その為、自分に非がなくとも自分が悪いと言い、ウィルと友情関係を築こうと努力する。

「友達?」

「友達」

「いいのか?」

「しつこいぞ」

「よ、宜しく」

 恐る恐る手を伸ばす。ウィルは差し出された手を握ると、今度は力を込めることはしなかった。それどころか上下にブルブルと何度も振り、長い友情関係を築いていこうと約束し合う。

 今度は、やっとゲーリーが受け入れてくれる。そして互いに笑い合い、仕事について語る。
< 222 / 359 >

この作品をシェア

pagetop