ユーダリル

 二人で一緒に仕事を行えば、今以上に捗るだろう。そして互いに切磋琢磨することで、能力も伸びていく。それに比例して、ユーダリルのトレジャーハンターのイメージも良くなる。

 同時に、ギルドマスターエリアの機嫌も良くなっていく。まさに、利点の方が大きかった。

 仕事現場は、何処にしようか。

 次々と、有名な場所の名前を上げていく。しかし、なかなかいい場所が決まらない。何より有名な場所は、数多くのトレジャーハンターが侵入し、宝物を持ち出してしまっている。

 なら、危険な場所は――

 暫く、沈黙が続く。

 だが宝を求めて行くとしたら、危険な場所に立ち入らないといけない。ウィルの提案にゲーリーは、渋々頷く。

「よし、決定」

「怖い生き物がいないといいな」

「じゃあ、この洞窟の狼で慣れないと。あのギルドマスターから、菓子を貰ったんだよ。与えてみる?」

「いいのか? って、あのマスターが菓子! はあ、天候が悪くならなければいいんだけど」

「それ、同感」

 ギルドマスターエリアの性格を考えると、誰かに菓子を与えるというのは考え難い。だが今回、エリアはウィルに菓子を与えた。これに裏があると思ってしまうのは、今までの経験上の考え。

 それでも、頂いた好意は受け取らないといけない。ウィルはディオンの背中に括り付けていた箱を手に取ると、ゲーリーの目の前に差し出す。箱の中身は焼き菓子。蓋を開けた瞬間、甘い香りが漂う。

「美味そう」

「高い菓子だ」

「そうなのか?」

「兄貴が昔、食っていた。結構な値段だったねー。一回も、食わしてもらったことはないけど」

「そんな高いなら、勿体無い」

 ゲーリーにしてみれば、狼に与える菓子は安物でいいと思っていた。それに、食欲の方が優先してしまう。ゲーリーは菓子を数個手に取ると、バクバクと食べていく。相当味がいいのか、顔が緩んでいく。その時、事件が発生した。何と甘い香りに誘われ、ディオンがやって来たのだ。
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