ユーダリル
嵐の後に――
例の件から数日後。
ゲーリーは、ウィルのもとを訪れていた。その理由は、共に仕事を行う計画を練る為だった。
突然のゲーリーの訪問に、アルンは不信感を抱く。彼の行動は、幅広い情報網を使い知っていたからだ。
一体、何をしに来たのか――
アルンは、全身から殺気を放っている。
その時、紅茶を用意したユフィールがやって来る。すると、扉に張り付いているアルンを発見した。
「アルン様」
「いいところに来た」
「な、何でしょうか」
「何処へ行くのか聞き出せ」
「それは、ウィル様が……」
「いいだろう?」
満面の笑みに、恐怖心を抱く。ここで断ってしまったら、後で何を言われるかわかったものではない。ユフィールはコクコクと頷くと、アルンからの命令を受け取り、部屋の中に入って行く。
「お紅茶を……」
「有難う」
「彼女が、例の子か」
ゲーリーの言葉に、ユフィールはキョトンっとしてしまう。一方ウィルは、余分な話をしないように、咳払いを繰り返し注意を促す。しかし関係ないとばかりに、ゲーリーの質問が続く。
「彼は、優しい?」
「は、はい」
「だって」
「そんな質問はいらない」
「照れない照れない」
本気で怒ってくるウィルに対し、ゲーリーは面白おかしく笑う。今までのウィルであったら、瞬時に手が飛んだ。
しかし、二人は友情関係を築いた。その為、前以上に手が飛ぶ回数が減った。それに側に、ユフィールがいる。相手を殴っている現場を見られたくないという気持ちが働いた為に、何とか堪える。その沈黙が更にゲーリーの行動を助長させ、質問の回数が増えていった。