ユーダリル
アルンは、間延びした声音で唸る。そして深い溜息を付くと、仕事を行なう為に自室へ戻っていく。普段のアルンとは全く違う姿に、ユフィールはオロオロとしてしまう。そして、自身の姉に相談することにした。
ユフィールの姉セシリアは、日頃使用している秘書部屋で仕事を行なっていた。突然の妹の訪問に当初は驚くが、温かく出迎えてくれた。妹が、仕事部屋に来るのは珍しい。その為、ウィルと喧嘩したのか尋ねる。
その質問に、ユフィールはブルブルと顔を振る。今回、そのような理由で姉のもとに来たのではない。彼女は訪れた理由を話していくと、セシリアの表情が徐々に変化していった。
「本当に……」
「お、お姉ちゃん」
「でも、あれでも少しは良くなったの。昔と違って、真面目に仕事を行なっているのだから」
「そうなの?」
「そうよ。でも、ウィル様への態度は相変わらずね。こればかりは、此方が何を言っても無理なのよ」
アルンの秘書として働いているセシリア。彼女は他の人以上に、苦労を抱えている。それに何度もアルンの性格面の改善を試みたが、一度も成功していない。逆に、悪化していった。
セシリアはやれやれと肩を竦めると、今度は自分の思いを妹にぶつけていった。それは秘書を辞め、他の仕事を探した方がいいのではないということ。勿論、ユフィールは驚いた。
「どうして?」
「疲れたの」
「アルン様は、いいの?」
「そのアルン様が、問題なのよ」
「結婚しないの?」
「悩んでいるわ」
ユフィールは、姉がアルンと結婚するものだと思っていた。互いに愛し合いいい関係だと認識していたのだが、結果は予想外のもの。
セシリアは、アルンとの関係に悩んでいる。そして、別れを決意しつつあった。それを聞いたユフィールは、二人が分かれないで欲しいと思う。ウィルとの関係を邪魔してくるアルンであるが、それとこれは別問題。彼女は姉に相談を聞いてもらおうと来たのだが、逆に問題を抱えてしまう。