ユーダリル
「兄貴が身を固めて欲しいと思っているのは、会社の重役達の意見でもあるんだよね。前に、愚痴っていた」
「それでしたら……」
「早い方がいいね」
「でも、どうすれば……」
「問題は、其処なんだよ。兄貴って強情で我儘で、身内の意見も聞き入れない場合があるから」
流石、アルンの弟というべきか。ウィルは、実兄の悪い部分を言っていく。それを聞くユフィールは、難題の方が多いと知る。しかし、これくらいで諦めてはいけない。ユフィールは、姉の幸せを願った。
その願いは、ウィルも同じ。どちらかといえば、実兄よりセシリアの幸せを考えてしまう。
「敵は強い」
「わかっています」
「しかし、やらないといけない。まずは、セシリアさんに対しての愛情の深さを測らないといけない」
「ですが、どのように測ればいいのでしょうか。アルン様は、その……何と申しますか……」
「確か、セシリアさんは強いよね」
ウィルの言葉に、ユフィールは何度も頷く。セシリアは一見インテリの秘書というイメージが強いが、彼女は格闘を得意としていた。拳で壁をぶち破れ、握力は林檎を潰せるほど高い。
ラヴィーダ家最強のメイド達が、束になっても勝てない。そのような人物なら、多少の無理は効く。ウィルは脳味噌をフル回転させると、ひとつの計画を導き出し、ユフィールに提案する。
「いい?」
「姉がいいと言うのでしたら」
「なら、聞きに行こう」
「姉は、秘書室にいます」
「なら、兄貴に邪魔されなくていいか。兄貴に邪魔されると、本当に煩いからね。で、行く」
今回の計画は、早く進める方がいい。それをわかっているので、二人の動きは早かった。ウィルはセシリアのもとへ行くと、自分が考えた計画を話していく。当初驚いていたセシリアであったが、自分の将来が関わっているということで、受け入れてくれた。
いつもであったらメイド達の協力を仰ぐが、事が事だけに今回は邪魔になってしまうので何も言わなかった。