ユーダリル

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「久し振りね」

「バックアップはするよ」

「宜しくお願いします」

 彼の提案というのは、セシリアがウィルの仕事を手伝うというもの。勿論、内容はとレジャーハンター。秘書として働いている女性が……と思われるが、彼女は最強であるから大丈夫だ。

 要は秘書の仕事を辞め、新しい仕事に転身。それが、トレジャーハンターというものだった。

 これを知ったアルンは、何と言うか――

 セシリアの強さを知っている者であったら、特に何も言わないだろう。しかし、アルンは違う。彼は彼女を大切に思っているので、危険な職業に就くことを許さない。それを期待していた。

「駄目だったら、諦めて」

「……はい」

「でも、大丈夫です」

 姉の一生が掛かっている為か、ユフィールは気合が入っていた。珍しく自分も頑張りたいと言うが、彼女を危険な場所に連れて行くわけにはいかない。これに関しては過去に何度も言っているのだが、今日のユフィールがそれを受け入れることはしない。それだけ、協力したかった。

「貴女は、お仕事しなさい」

「お姉ちゃん」

「そういうことだから、許して欲しい。今回の計画が成功したら、何処かへ連れて行くから」

「わかりました」

 それを聞いたら、ユフィールは頷くしかない。ここで我儘を通したら、計画が上手く進まなくなってしまう。また、普段大人しいユフィールが慌しく動いたら、アルンに計画が知られてしまう可能性も高い。

 それに、これも重要な役割だ。ウィルの説明にユフィールは当初暗い表情を浮かべていたが、徐々に顔が明るくなる。

 妹のわかり易い変化に、セシリアはクスクスと笑う。その笑いにユフィールは横を向くと、何も言えなくなってしまう。

 一方ウィルは、姉妹のやり取りに困った表情を作る。アルンとウィル兄弟とセシリアとユフィール姉妹は、恋愛関係で複雑な立場に置かれている。その最大の難題というのがアルンで、彼を攻略すれば全ていい方向に物事が動く。それがわかっているので、三人は動く。
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