ユーダリル
なかなか真相を話さず、遠まわしで物事を話していく。瞬間、アルンの顔色が変わった。どうやら、ウィルが言っている意味を把握したらしい。それにこのように必死になるのは、彼女に好意を抱いている証拠。しかし想いを言葉に出すことはせずに今に至り、物事が悪い方向へ動いた。
アルンは今までの行動を反省しているのか、ブツブツと言葉を出していく。そして、へこんだ。
「場所、知る?」
「いい」
「無理して」
「トレジャーハンターのギルドだろう。その場所なら、知っている。お前の力は、必要ない」
「そう……なんだ」
折角協力してあげようと思っていたのに、アルンは弟の頼りにしたくないのか断ってくる。普段のウィルであったらこれ以上食い付くことはしなかったが、今回は内容が違う。セシリアの素敵な将来の為に、協力しようと考えていた。その為、食い付いて離さなかった。
「日頃の世話の礼がしたいよ」
「いらん」
「話の状況では、セシリアさんと仲が悪いようだけど。仲介役は必要だと思うよ。この場合」
弟が言うことも一理ある。アルンは両腕を組むと、弟の言葉を受け入れるべきか考えていく。しかし、考えるまでもない。弟の力を借りた方が、物事がいい方向に流れていく可能性が高い。アルンは渋々、弟の手を借りることにした。その瞬間、ウィルの口許が怪しく歪んでいった。
「じゃあ、兄貴出発」
「わ、わかった」
「いつもの兄貴じゃないね」
普段は強気なアルンだが、見る影もないほど弱弱しい。相当、ショックを受けているのだろう。同時に、どれほどセシリアを想っているのか理解することができた。また、可愛いと思う。
まさか、今回の件でこれほど効果があったとは――アルンに気付かれないように、心の中で笑う。
アルンの私室から出ると、ウィルはアルンの背中を押すようにして、建物の外へ出て行く。途中、メイド達に目撃されてしまう。その為、いい噂になってしまうが、構っている暇はない。今は早くアルンをギルドへ連れて行き、セシリアに会わせないと話しにならない。