ユーダリル

 途中、ユフィールとすれ違う。ウィルはアルンに気付かれないように彼女に目配せすると、計画が上手く進んでいることを伝える。その目配せに、ユフィールはホッと胸を撫で下ろし仕事に向かった。


◇◆◇◆◇◆


「仕事を与えました」

「な、何!?」

 ギルドマスターエリアの言葉に、アルンは怒鳴り声を上げた。その大きい声はウィルとエリアの鼓膜を痛め、暫く聴力を半分失う。しかしアルンは二人の気持ちを理解していないのか、更に叫び続けた。

「あ、兄貴」

「落ち着いていられるか」

「だからって、耳が……」

 痛む耳を押さえつつ、必死に兄を宥めていく。だが、アルンはウィルの言うことは聞き入れてくれない。それどころかますます興奮し、エリアが使用している机をベシベシと叩いていく。

「落ち着いてください」

「煩い」

「兄貴、八つ当たり」

「そもそも、セシリアに仕事を与えたのが悪い。与えなければ、このようなことはならなかったんだ」

 ベシベシと机を叩いていた手を上げると、エリアに向かってビシッと人差し指で指す。自分勝手の意見にウィルは溜息を付き、エリアはやれやれと肩を竦めていた。見方によっては、子供そのもの。いや、態度と言動は幼児に近い。その為、二人をますます困らせていった。

「一体、何処へ――」

「彼女ですか?」

「当たり前だ!」

「言っていい?」

「はい。言わないと、兄貴はますます怒ります。これ以上怒ると、何を仕出かすかわかりません」

 ウィルの説明に、エリアは長い溜息を付く。そして一定の声音で、セシリアが向かった場所を話す。彼女の居場所を聞いた瞬間、アルンは目を見開く。同時に、とんでもない場所に行ってしまったと後悔する。だが冷静に考えると、こうなった原因を作ったのはアルン自身だった。
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