ユーダリル

 このような部分が修正すれば、セシリアとの仲が一気に縮まるに違いない。しかし、物事がいい方向に流れることはなかった。特にアルンの場合、それが人一倍強い方であったからだ。

「兄貴、場所はわかっているよね」

「まあ……な」

「じゃあ、先に行っているよ。兄貴が到着する前に、準備も整えてあるから。心配しないで」

「わかった」

 最後の最後まで、態度が大きい。しかい敢えて、それに対してのツッコミをすることはしない。

 ウィルはギルドを出て行くと、一人暮らし用の自宅に戻り支度をしていく。そして、ディオンの背に跨った。




 高速で飛ぶディオン。その為、ウィルは先に目的地に到着していた。ウィルとディオンの姿にセシリアは駆け寄ると、真っ先にアルンはどうしたのか尋ねる。それだけ、気にしていた。

「また」

「そうですか」

「一応、来ると思う」

「一応……ですか」

 曖昧な言葉に、セシリアは苦笑いを浮かべてしまう。このような性格とわかっていたが、まさかこれほど酷いとは……二人は同時に溜息を付く。しかし、ここで諦めては話にならない。

 全ては、セシリアの幸せの為。それに、アルンが経営している会社の社員の為でもあった。ウィルは、それを熱く語っていく。すると当初は半分諦めていたセシリアが、元気を取り戻した。

「有難うございます」

「ユフィールの願いでもあるからね」

「私の心配より、自分の身を心配しないといけないのに。そういう部分は、誰に似たのでしょう」

「セシリアさんだね」

 ウィルの意見は、本質を示していた。セシリアは普段アルン相手に厳しい言葉を言っているが、それ以外の人物に対しては実に優しい。特に妹に対して深い愛情を示し、素敵な姉妹関係を築いている。会社の重役達や屋敷で働いている使用人からの評判がいいのは、これらが関係していた。
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