ユーダリル
「場所は、あっているな」
「うん」
「セシリアは?」
「その前に、息を整えないと」
「煩い!」
相当イライラしているのか、八つ当たりが返ってくる。予想していたとはいえ、気分がいいものではない。だが、感情の爆発は計画の破綻を招くので、ウィルは冷静に対応していく。
「それじゃあ、セシリアさんを捜しに行くことができないよ。これに関しては、兄貴は素人だし」
確かにトレジャーハンターに関しては、素人そのもの。逆にウィルの方が、沢山の知識を持っている。
勿論、頭の中では理解している。しかし感情が伴わないのか、ついつい熱くなってしまう。
その為、顔が引き攣っている。だが、渋々ながら受け入れた。今回の一件にはセシリアが絡んでいるので、実に物分りがいい。いつもとは違う可愛らしい態度にウィルはクスクスと笑うと、ディオンの背中に括りつけてあった荷物を解くと、アルンに手渡し頑張るように言った。
「荷物」
「全部か」
「そう」
「多い」
「これくらいないと危ないよ。兄貴は強いけど、野生生物と戦ったことはないし。念の為だよ」
「野生生物と戦うのか!」
「うん。場所によって、そういう生物が生息している。中には強い生物がいるから、気を付けて」
ウィルの説明に、アルンの顔が青褪めていく。別に、野生生物を恐れているわけではなく、セシリアの身を心配していたからだ。
確かに彼女は強いが、万が一も考えられる。危険な妄想が広がっていく。アルンは絶叫と共にウィルが用意した荷物を手に取ると、セシリアが向かったとされている洞窟へ入って行った。
一瞬の出来事に、ウィルは何も言うことはできない。ただアルンが立ち去った方向に視線を向け、やれやれと肩を竦めるしかできない。その時、物陰に隠れていたセシリアが姿を現す。先程のやり取りを聞き動揺しているのか、アルンが消えた方向とウィルの顔を交互に見た。