ユーダリル
一拍した後、セシリアが駆け出した。当初、計画に乗り気の彼女であったが、本心ではアルンが心配だったのだ。真剣そのものの表情は、現在の心境を物語っている。その姿にウィルは、口許を緩めた。
「仲がいい」
運命の相手という言葉が存在するが、アルンとセシリアにはこの言葉が似合う。それだけ、素敵な二人だ。
ウィルはディオンの側に行くと地面に座り、二人が帰ってくるのを待つ。途中、ディオンにじゃれ付かれた。
そして、十数分後――
二人が、帰って来た。
「お帰り」
「……うむ」
「兄貴、荷物」
「使わなかった」
「別にいいよ」
アルンから荷物を受け取ったウィルは、生暖かい視線を兄に向ける。一方のアルンは弟と視線が合った瞬間、瞬時に逸らした。相当恥ずかしい思いをしたのか、頬が微かに赤かった。
その表情に、ウィルは瞬時に意味を悟る。この調子だと、物事が上手い方向に流れたに違いない。
「セシリアさんを借りるよ」
「お、おい」
「ちょっと話」
「待て」
「すぐに終わるよ」
ウィルはセシリアの腕を掴むと、アルンに言葉が届かない方向へ連れて行く。そして、作戦の成功かどうか聞く。勿論、雰囲気を見ていると成功かどうか瞬時に判断できるが、一応尋ねた。
セシリアからの回答はない。しかし赤らめている頬を見ると、ウィルの考えが正しいと知る。
「中で、何があったの?」
「そ、それは……」
相当恥ずかしいことがあったのか、セシリアは口ごもってしまう。無理矢理聞き出してもいいが、現在の雰囲気を考えると無理矢理というのは可哀想だ。こういう場合、同性同士が一番。そう考えたウィルは、後でユフィールに聞き出してもらえばいいと判断し、話を終了させた。