ユーダリル

 ウィルはセシリアに内緒で、更に計画を練っていく。いい雰囲気になった今、二人並んで帰宅を促すのが一番だ。ウィルはアルン用に用意した荷物を担ぐと、ディオンと一緒に仕事にいって来ると言う。

「どうしてですか?」

「邪魔でしょ? ギルドマスターには、言っておくから。それに、仕事しないと金欠になるし」

「ウィル様」

「兄貴を頼むよ」

 それだけを言い残すと、ウィルはディオンのもとへ行き背中に乗る。そして、二人を取り残し立ち去ってしまった。

 弟の素早い動きに、アルンは唖然となってしまう。一方のセシリアはアルンと同様に唖然となっていたが、心の中では感謝していた。仕事以外で二人きりというのは、仕事の影響で滅多にないからだ。そして二人は、ウィルの計画通りに仲良く並んで自宅に戻っていった。




「これで兄貴、結婚するかな」

 二人と別れたウィルは、一目が付かない場所――無人島の端に、腰掛けていた。そしてウィルの側で横たわっているディオンは寛ぐように顔を地面に付け、ウィルの言葉を聞いていた。

 ディオンにとって、アルンとセシリアの結婚はどうでもいい。それを全身で言っているのか、尻尾でベシベシと地面を叩いている。その結果、無人島の一部分が破壊されていった。

「崩れるぞ」

 ウィルは今、両足を空中に投げ出して座っている。その為、ディオンの尻尾の力で島の一部が崩れ落ちたら落下は免れない。ウィルの指摘にディオンは尻尾で地面を叩くのを止めると、今度は左右に振る。

 物分りのいい相棒を褒めるように頭を撫でると、アルンとセシリアが上手くいくように願う。

 ウィルはアルンを「困った兄」と認識していたが、こういう面になるとついつい手を貸したくなってしまう。これも、血の繋がった兄弟というものなのか。ウィルは、苦笑していた。

 これで、やっと二人が結婚する。当初嬉しいと思っていたが、脳裏の自分の両親の顔が浮かんだ瞬間、一気に血の気が引いた。結婚となった場合、両家の親に報告しないといけない。セシリアの両親に関しては何ら問題はないだろうが、一番の難点はこちら側の両親だ。
< 241 / 359 >

この作品をシェア

pagetop