ユーダリル
数分後――
紙とペンを持ち、ウィルが帰って来た。そしてユフィールの手首を掴むと、空いている部屋の中に押し込む。
別に、廊下で堂々と手紙を書いていてもいい。だが、メイド達に見付かったら何を言われるかわかったものではない。それを危惧し、ユフィールを空いている部屋の中に押し込んだ。
そして微かに扉を開き、其処から廊下を覗き見る。幸い、メイド達に見付かることはなかった。
「大丈夫」
「私のお仲間でしょうか?」
「そう。見付かると面倒」
「すみません」
「ユフィールが謝ることじゃないよ。で、内容を考えよう。其処の椅子に、座っていいから」
「はい」
「やっぱり、遠回しじゃなく直接的な表現がいいかな。両親の性格を考えると、遠回しは……ね」
ユフィールはウィルの両親を直接見たことはないが、周囲の話でどのような人物かはわかっていた。勿論、感想はいいものではないが、相手は好意を抱いているウィルの両親。悪い感想は言えなかった。
しかし、ウィルは違う。自分の両親にいい印象を抱いていないので、口を開けば悪口が出てきた。
「そ、そこまで……」
「いいんだ」
「……そうですか」
ウィルがそのように言うのだから、それ以上に何も言えなかった。セシリアと違い、ユフィールの自己主張は低い。その為か、大人しくウィルの両親に対しての愚痴を聞いていた。
「……と言う訳だよ」
「凄いです」
「だから、シッカリ手紙を書かないといけないんだ。今回、ユフィールが手伝ってくれて助かるよ」
両親に対し厳しい言葉を言い続けてきたウィルだが、ユフィールに対しては特別に優しい。今まで顔を歪ませて愚痴っていた表情が一変、満面の笑みに変化していた。その素早い変化に、ユフィールは言葉に出すことはしなかったが、アルンと性格面が似ていると思った。