ユーダリル
手紙の枚数は、一枚半。
量は多くはないが、想像力豊かな両親。短い文章の中で、勝手に妄想を膨らませてくれるだろう。
ウィルは手紙をユフィールに手渡すと、彼女から感想を聞く。勿論、内容に文句はなかった。
「よし、送ろう」
「返事を知りたいです」
「いいよ。返信の手紙が送られて来たら、一緒に読もう。そうなると、実家に送らないでと書いておかないと」
今回の手紙は、アルンとセシリアには内緒で送る。何より、気付かれたら厄介であるからだ。
重要な一文を加えた後、手紙を封筒に入れ厳重に封をする。後は、送る相手の送り主の名前を書くだけだ。
「終わり」
「お疲れ様です」
「何日で到着するかな」
「保養地と聞きましたが……」
「そう、保養地で暮らしている。温かくて、いい所みたいだよ。今度、一緒に行ってみようか」
「いいのですか?」
突然の提案であったが、ユフィールは嬉しそうに頷き「行きたい」と、言う。それ以前にウィルと一緒であれば、どのような場所にも着いていってしまう。それが、彼女の特徴だった。
ユフィールの反応に、今度はウィルが嬉しそうに頷く。やっぱり、好意を抱いている相手が機嫌がいいと、自分も気分が良くなるということなのだろう、ウィルは鼻歌を歌っていた。
「じゃあ、出して来る」
「わかりました。その……今日は?」
「お願い」
「それと夕食なのですが、新しい料理に挑戦したいと思っているのですが、いいでしょうか?」
「新しい?」
興味を惹く単語に、ウィルは身体をピクっと揺らす。ユフィールの料理は、回数を重ねるごとに上手くなってきている。今の彼女の腕前は、金を取っても支障ないほどまで成長した。その彼女が、新しい料理を作る。ウィルが食いつかないわけがなく、目を輝かせていた。