ユーダリル
エリアが、結婚式にやって来る。未来の出来事だが、考えただけで背筋が凍る思いがした。別に、マスターがトラブルを誘発するわけではない。問題は、彼女が放つ独特のオーラだ。
ウィルは、それを恐れている。だが、口に出すと何をされるかわからないので、沈黙を続けた。
「で、いつ?」
「それは、まだ……」
「ああ、そうよね。結婚が、決まっただけだったわ。私としたことが、先走ってしまったわ」
結婚式の参列が相当楽しみなのか、口許に片手を当てコロコロと笑っている。見方によっては普通の笑い方だが、ウィルを含めギルドに所属しているトレジャーハンターにしてみれば悪魔の笑いだった。
「で、説明は終わり?」
「は、はい」
「そう。今回の出来事は、久し振りに楽しめたわ。素敵なカップルが、生まれたのですもの」
「有難う……ございます」
「身内のことなので、今回は特別よ。次からは、真面目に仕事をしてもらうわ。貴方の腕前には、期待しているの」
「努力します」
「じゃあ、また」
エリアの言葉にウィルは頭を垂れると、逃げるように部屋から出て行くと、ゲーリーの姿を捜す。
予想通り、ゲーリーはギルドの中にいた。そして調べ物をしているのか、書庫で本に埋もれている。
「何をしているんだ」
「ああ、明日のオークションの件で」
「何か、落札するのか?」
「そうなんだよ。親に頼まれた。俺はどうでもいいんだけど、歴史に興味があったので調べている」
一見、不真面目に見えるゲーリーだが、意外に勉強家だった。彼は影で必死に勉強を行い、高い知識を持っている。
技術面ではウィルに劣るが、これに関してはウィルより明らかに上を行く。しかし、いかんせん運が悪い。それにより完全にウィルに負けてしまっているが、今は違う。彼はウィルと一緒にいることにより、悪運を中和しつつあった。お陰で本人曰く、最近調子がいいらしい。