ユーダリル
しかし、平和が一番。
その為、二人の関係がいい方向に流れていることを喜ぶ。そして、ギルドは平和が保たれていた。
「後ろで見ているよ」
「一緒じゃないのか」
「何かを購入するわけじゃないし」
「できれば、一緒にいてほしいな。あのような場所って、はじめてだから寂しいし。いいだろう」
ゲーリーからの頼みごとに、一瞬ウィルは迷う。ウィル自身、オークションに品物を出展しても参加したことはない。それにアルンから、独特の雰囲気が漂っている場所だと聞いている。
聞いた話と妄想が入り混じり、不安感の方が大きくなってきてしまう。だが、熱い友情の為に引き受けた。
「嬉しいね」
「隣にいるだけ」
「それでいいよ」
ウィルが一緒にいれば心強いと思ったのか、ゲーリーの顔が生き生きとしている。彼にとって今まで、友人と呼べる人物はいなかった。一応、仕事仲間は存在していたが、心を許せる相手ではない。
しかしウィルは、その心配がなかった。それが嬉しかったのか、ゲーリーは鼻歌を歌っている。
「オークションは真剣勝負」
「軽いね」
「気張っていると、欲しい物が手に入らないからね。それに、こうしていないと落ち着かないんだ」
「ああ、なるほど」
ゲーリーの本音を聞いたウィルは、ポンっと手を叩く。普段不真面目な一面が強いゲーリーが、今日は逞しく見えてくる。人間、何処かしらいいところがあるというが、こういう面が尊敬できた。
「到着」
「何だろう、緊張してきた」
「ほら、シッカリする」
仕事の時、ウィルは全くといっていいほど緊張しないのに、今日に限ってやたら緊張してくる。現在の状況を説明すると、アルンの目の前で説教を受けている時と同じ。額にはネバっとした嫌な汗が滲み出し、心臓が激しく鼓動してくる。そして、貧血寸前で倒れそうだった。