ユーダリル

 一体、どれくらいの人物が会場にいるのか。その人数にウィルは、圧倒された。そして大半の人が、身形がいい。

 しかし、理由はわからないわけでもない。このような場所に参加できるのは、一部の金持ちだ。

 まさに、別世界。

 その為か、独特の雰囲気が漂う。

 と言って、特に不愉快というわけでもなく、どちらかというと緊張感で身体がガチガチだった。

「席、何処がいい?」

「任せるよ」

「じゃあ、前で」

 商品が見え易い位置にいきたいのか、ゲーリーは最前列を選ぶ。それに対してウィルは無言で頷くと、ゲーリーに続き最前列の席に腰掛ける。そして、オークションの開始を待った。

 数分後――

 オークションが、はじまった。




 ゲーリーが目当てとしている品物は、五番目。その為、最初はオークションに参加している人達の競り方を見学する。

 一番目の商品から、白熱していた。相当値打ちがあるものなのか、値段も釣り上がっていく。

「大丈夫か」

「ちょっと、不安」

「予想以上に値が高い」

「今日の参加者は、金を持っている」

「うーん、やばいかも」

 しかし、今更会場から出て行くわけにもいかない。ただ、狙っている物の値が予想以上に釣り上がらないことを願う。しかしその願いも空しく、二番目・三番目の品物も値段が高い。

「そろそろだね」

「あ、ああ」

「金は貸せないけど、競り落とせることを祈っているよ。なんだか、神頼みになっているけど」

 ウィルの言葉に、ゲーリーは力なく頷く。だが現在の状況を考えると、神に縋ってしまう。今回、何が何でも品物を持ち帰らないといけない。
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