ユーダリル
そのプレッシャーがゲーリーを押し潰しているのか、顔が引き攣っている。傍から見ると可哀想だが、掛けていい言葉が見付からない。
その時、ゲーリーが求めていた物が運ばれてきた。実物を見た瞬間、ウィルは目を丸くしてしまう。文章とゲーリーの説明である程度想像していたが、これはそれ以上の物であった。
ゲーリーの兄が欲しがっている理由が、わからなくもない。同時に、先程以上に値が釣り上がると危惧する。
案の定、ウィルの予想は的中した。競がはじまった瞬間、次々と値が上がっていく。ゲーリーも負けじと食い付いていくが、どこか危ない。しかし、神はゲーリーを見捨てなかった。
「おお!」
「やったー」
落札できたことが相当嬉しかったのか、ゲーリーは立ち上がるとその場で大袈裟にガッツポーズを行なう。そんな彼の面白い態度に、オークションに参加している全員がクスクスと笑い出す。
勿論、その笑い声はゲーリーの耳に届いていた。周囲の反応に気恥ずかしさを覚えたのか、彼はオズオズトした態度で席に腰掛けると、身体をウィルに近付け小声で話し掛けてくる。
「奇跡だ」
「これで、怒られずに済むね」
彼の言葉に、ウィルは何度も頷く。そして二人は固く手を握り合うと、上下にブルブルと振り喜びを分かち合う。
しかし、これで終わったわけではなかった。この後、金を支払し品物を受け取りに行かないといけない。
だが、ウィルは場所がわからない。そのことをゲーリーに尋ねると、怪しげに口許を緩めた。
「気持ち悪い」
「今日は、立場が上だ」
「何だ、その言い方」
「まあ、気にするな」
「うーん、今回は仕方ない。お前に頼らないと、迷子になってしまうから。で、案内よろしく」
ウィルの言葉に、ゲーリーはポンっと胸を叩く。しかし、席から立ち上がろうとはしない。
どうやら最後まで、オークションを見学していきたいようだ。その提案に、ウィルは同意した。