ユーダリル
それに続くように、ゲーリーも壁に寄り掛かる。そして同時に溜息をつくと、これもまた同時に項垂れてしまう。だからといって、長時間その場に居続けるわけにはいかない。
二人は残った気力を振り絞ると、品物を受け取りに向かう。専用の部屋に入るとゲーリーは受付の者に自分の番号を言うと、手持ちの金を全部差し出す。そして、商品が入った箱を受け取った。
目的の物を手に入れ、ゲーリーは安堵の表情を浮かべる。これで、親族から文句を言われずに済むからだ。一方のウィルも、ゲーリーが目的の物を落札できたことに、口許を緩めていた。
「お疲れ」
「今日は、助かったよ」
「いいよ。最初は緊張していたけど、途中から楽しくなってきたから。でも、あまり参加したくない」
「俺もだよ」
オークションに参加しただけで、これだけ疲弊するとは思いもしなかった。二人は宝探しを生業としているので、体力には自信があった。それだというのに、疲労は半端ではない。
ウィルは一休みということで、何処かで休もうと提案する。しかしゲーリーは先に、目的の物を家に届けたいらしい。高い金を支払い手に入れた物。盗まれたら、元も子もないからだ。
「一緒に行った方がいい?」
「できれば」
「じゃあ、行くよ。お前の家というのも、見てみたいから。結構、大きい建物と聞いているし」
ゲーリーの実家は貴族様。その点からして、爵位を持っていないバゼラード家の建物より大きいだろう。しかし、ゲーリーは謙遜を続けていく。その言い方にウィルは不満を抱いたのか、早く家の外観を見たいと建物の外へ押し出していく。そして、命令口調で案内するように言った。
「怖いな」
「謙遜するからだよ」
「普通は、謙遜するよ」
「だって、貴族様の息子と聞くし。その家が、あばら家根の小さい建物というわけじゃないだろう」
「まあ、そうだな」
「なら、でっかい家だよ」
と言われて、自分が暮らしている建物を自分の口で「大きい」と言うものどういうものか。