ユーダリル
ゲーリーはポリポリと人差し指で頬を掻くと、ウィルの目で建物の大きさを測ってもらうことにした。この世に「百聞は一見にしかず」という言葉があるように、実際に見てもらった方が早い。それに会場の出入り口で長く立ち話を続けていると、邪魔になってしまう。
しかし、問題がないわけでもない。ゲーリーの家族は、ウィルがやって来ることを知らないのだ。だが、ゲーリーは「大丈夫」と、言う。目当ての商品を手渡せば、機嫌がいいらしい。
「保障する」
「信用するよ」
ウィルの言葉に大きく頷くと、ゲーリーはいそいそと自宅がある方向へ歩いて行く。途中、歩調が早くなっていきウィルがついて行くのが大変だったが、何とかゲーリーの自宅に到着することができた。
彼の自宅は、ユーダリルの中で一番大きい島の中心部に建っていた。流石貴族の邸宅というべきか、古めかしい外見の中に気品が感じられた。それに敷地面積も広く、建物も大きい。
正直いって、ウィルの実家より立派だった。だというのに、ゲーリーは謙遜を続けていく。
「相当、貯めているね」
「何を?」
「金だよ」
「やっぱり、そう思うか?」
「思うね」
「なら、此方に回してほしいよ」
ポツリと呟くゲーリーの本音に、ウィルはポンっと彼の肩に手を置き同情していく。彼の気持ちは、痛いほどわかる。
と言って、互いの傷を舐め合いに来たわけではない。ウィルは更にポンポンっと肩を叩くと、何処に入り口があるか尋ねる。彼にしてみれば、早くゲーリーの家族が見たかったからだ。
「こっち」
「表玄関じゃないのか」
「俺は、裏から入る」
「一応、客人だよ」
「違う。仲間」
「……そうか」