ユーダリル
ゲーリーの案内で、ウィルは彼が使用している部屋に行く。その途中、ゲーリーの兄と出会った。年齢は、5歳年上という。長々と会話をしていないので性格面を判断できないが、何処かアルンに似ている部分が感じられた。漂う雰囲気に戦き、ウィルは一歩後退してしまう。
しかし、殺されるというわけではない。それに、アルンの全てが似ているわけではなかった。
「誰だ?」
「仕事仲間です。前に話しました……」
「ああ、アルン殿の弟か」
ゲーリーの兄の言葉に、ウィルは目を見開く。それはアルンを知っているということではなく「殿」と付けたことであった。二人の年齢は、然程変わらない。だというのに「殿」と付けた。
両者は、どのような関係なのか。失礼とわかっていながら、ゲーリーの兄を凝視してしまった。
「何かな?」
「兄と、どのような関係で……」
「仕事上のライバル」
それを聞いたウィルは、反射的に身構えてしまう。ライバルといえば、敵同士の関係。今までアルンに攻撃を仕掛けた者達の行動を考えると、油断できなかった。下手したら、我が身も危ない。
その時、笑い声が響く。そしてヒラヒラと手を振り、考えが違うということを教えてくれた。
「そうなのですか」
「ライバルといっても、攻撃を仕掛けているわけじゃない。噂は、聞いている。所謂、業務提携だよ」
「そ、そうですか」
説明を聞き、ウィルは何処かホッとしていた。もし血を見る争いを行なっていると判明したら、瞬時に逃げ出していた。そして、兄に報告に行っていた。しかし、その心配はない。全身から力が抜け倒れそうになってしまうが、何とか踏み止まり深く長い溜息をついた。
「驚いた」
「でも、わからない」
意味深い台詞に、ウィルはゲーリーに小声で話し掛ける。何処か癖があるゲーリーの兄は、話し難い。
当初はアルンよりいいと考えていたが、根の部分は一緒。それどころか、アルンより上をいっている感じだった。