ユーダリル
嵐のお茶会
今日ラヴィーダ家で、大事なお茶会が開催される。それは「訪れる相手にとって大事」という意味合いが強い、今回のお茶会。そもそもこのユーダリルで、ラヴィーダ家に対抗できる人物や会社は存在しない。つまり圧力を掛けて楽しむのは、いつもアルンの方であった。
そのお茶会の準備で、朝からメイド達は急がしそうに動き回っている。その中に、ユフィールの姿はない。先輩メイドからの頼みで、紅茶の買いに出掛けていた。と、ここまでは普段の出来事として何ら変わりはない。しかし今回は、一人でお使いに行ったわけではない。
何と強制的に、ウィルが借り出されていたのだ。「一人で買い物に行くのは危険」という理由であったが、ユーダリルは平和な場所。女性が一人歩きをしていても、事件に巻き込まれることは少ない。
だが、これには裏が存在した。
ウィルとユフィールが互いに好意を持っているというのは、ラヴィーダ家で働いている者なら知っている。そして、唯一それを猛烈に反対しているのがアルン。それではユフィールが不憫でならないので、それにより仲間達が協力し、ウィルと一緒に買い物に行かせたのだ。
当初ユフィールは「恥ずかしい」と、断った。
だが、ウィルに連れられて仲良く買い物へ向かう。
メイド達は、アルンを騙したと喜ぶ。
しかし、そう簡単に行かないのが世の摂理。
現実の厳しさが存在した。
兵のアルンが、メイド達の行動に気付いていない訳がない。よって、給料が後に引かれたという。
無論、後でメイド達は仕返しをした。
◇◆◇◆◇◆
「店って、何処かな?」
ウィルは足を止め、ユフィールに言葉を投げ掛けた。先程から同じような場所を往復しており、目的地になかなか到着しない。
一体、どれくらい歩けばいいのか――ウィルは、溜息をついてしまう。ウィルは、紅茶を売っている店を知らない。本来であったら店の場所を知っている者が案内するのだが、肝心のユフィールはその店の場所をおぼろげにしか覚えていないという。その答えに、ウィルは苦笑いを浮かべる。そして仕方がないと、ユフィールの手を握って適当に歩いていく。