ユーダリル

「賛成」

 勿論、断ることはしなかった。精神的疲労を癒すには、美味しいものを食べたり飲んだりするのが一番だった。しかしゲーリーの兄デービットは、やっぱりアルンに似ていた。どうやらアルンの周囲には、このような人種が集まりやすいと、ウィルは確信するのだった。

 世の中に「類は友を呼ぶ」という言葉があるが、まさにその言葉が当て嵌まるものだった。しかし、ウィルは気付いていない。彼もまた「類は友を呼ぶ」という言葉が似合っていることを――

 勿論、相手はゲーリーだった。

 だが、ウィルは全くわかっていない。だからこそ自身の兄の性格を嘆き、時折溜息をつく。

「この部屋」

 いつの間にか、ゲーリーの私室に到着していた。考えながら歩いていたので、彼の言葉にウィルは一瞬間の抜けた表情を作るが、何事もなかったように振る舞い、開かれた扉からいそいそと中に入っていく。すると同時に、先程のメイドが紅茶とお菓子を持ってやって来た。

「有難う」

「その……部屋の中に……」

「ああ、いいよ」

 ゲーリーの言葉に軽く頭を垂れると、部屋の中に入っていく。そしてテーブルの上に受け取った物を置くと、ゲーリーの方に視線を向け「何か用があったら、呼んで下さい」と言った。

「どうも」

「では、失礼します」

 その言葉の後、ゲーリーに向かって深々と頭を垂れる。そしてメイドは、静かに部屋から出て行った。メイドが立ち去ったのを確認すると、ゲーリーは部屋の中に入り扉を閉めた。

「いい部屋だろう」

「荷物が多いね」

「仕事に欠かせないぞ」

「勉強に、使っているんだよね。こういうのを見ると、真面目にやっているというのがわかるよ」

「うーん、裏がある言い方」

「そんなことはないよ。で、荷物を渡さなかったんだ。先程の兄が、頼んだ物じゃないのか」
「違う。頼んだのは、一番上」
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