ユーダリル
ゲーリー曰く、先程のデービットは二番目の兄。競り落とせと命令したのは一番上の兄で、今は仕事を行なっている時間という。それが終わったら、持っていくらしい。ふと、ウィルは疑問を抱く。それは、一番上の兄はどのような仕事をしているのかというものだった。
「一番上の兄は、ユーダリルを守護している守護隊を統括しているんだ。一応、役割らしい」
「貴族様だからか」
「らしいね」
過去、貴族は強い力を持っていたが、今は「名ばかり」という言葉が似合う。現在は、どちらかといえばアルンのように事業を行なっている者の力が強く、貴族との立場は同等になっていた。
しかし昔から、統括の地位は貴族の者が就くと決まっているので、ゲーリーの兄が就いたという。
「そういうのも大変だ」
「一番上の兄は真面目だから、こういう役には合っている。二番目の兄は、あのような性格だし」
「……納得」
先程のやり取りを体験していると、二番目の兄が多くの人間を統率するに値する人物ではないと思える。
しかし、あのような性格ながら商売を行なっているという。それもアルンと同じ商売を――
「あの商売って、兄貴のような性格の人物が集まりやすいのかな。そう、思えてくるから不思議」
「確か、魚介類関係だったかな。これらは高いから、儲かるって聞いているけど、本当なのか」
「そうらしいね」
ユーダリルの中に「川」というものが存在しているが、地上の川と違い短く、生き物が住める環境ではない。下手すれば島の端っこから落下してしまい、優雅に泳いでいられない。
その為、魚介類は輸入に頼っており、場所が遠いので全てが干物となってユーダリルに入ってくる。これらは珍しい食べ物ということで、必然的に値段が高騰していく。お陰で、庶民は滅多に購入できない。
「だから、大金を使えるのか」
「じゃないのか」
「そうなると、また頼まれそうな」
「有り得るね」